メンテナンス術

雑木の庭を台無しにしないために|剪定方法の違いを解説【プロ目線】


森のような庭を、自宅に

ある日、山道を歩いていると、木漏れ日が差し込む雑木林に出会いました。
光が枝の間を通り、風がサワサワと葉を揺らす。
ただ立っているだけで心が落ち着き、「この風景を庭に持ってこれたら…」とふと思ったんです。

実は、それを叶えてくれるのが「雑木の庭」。
しかし、ひとつ大きな落とし穴があります。

雑木の庭は、剪定の方法を間違えるとすぐに台無しになってしまうのです。

この記事を読めば、

  • 日本庭園と雑木の庭の「剪定の考え方の違い」
  • 雑木の庭でやってしまいがちな失敗と原因
  • プロが意識する剪定のコツ
  • 入社したての僕の失敗談と、そこから得た教訓
    が分かります。

庭に森を迎えたい方にとって、今日から役立つヒントになるはずです。


雑木の庭とは「森を庭に持ち込むこと」

雑木の庭は、一言でいえば森の断片を庭に移した空間

玄関前にモミジを植えるだけでも、暮らしの景色は一変します。
窓を開ければ風が枝を抜け、四季折々の変化が感じられる。
家にいながら森を歩いているような贅沢を楽しめるのです。


日本庭園との違い|「整える」か「残す」か

ここで、よく比較されるのが日本庭園。
両者は同じ「庭」でも、考え方は正反対です。

  • 日本庭園 … 松を仕立て、形を整え、美しさをデザインする。
  • 雑木の庭 … モミジやアオダモを組み合わせ、自然のまま残す。

つまり、日本庭園が「完成させる庭」なら、雑木の庭は「育てていく庭」。

👉 剪定の本当の意味をもっと知りたい方は、こちらの記事も参考になります:
剪定の本当の意味は「枝を切る」ことじゃなかった


入社したての頃にやってしまった失敗

僕がまだ剪定の奥深さを真に理解していなかった半端な時代。
お客様のモミジを剪定したときのことです。

「とにかくきれいに見せたい!」と、枝をバッサリ切りました。
切った瞬間はスッキリして、「いい仕事をした」と思ったのを覚えています。

ところが翌年。
幹吹きが風通しが悪くなり、害虫が発生。
しかもお客様から「自然な雰囲気がなくなった」と言われました。

そのときの胸のざわつきは今でも忘れません。
この経験から学んだのは、雑木の庭では“切る勇気”より“残す勇気”が大事だということです。


よくある失敗と原因

雑木の庭を手入れするとき、ありがちな失敗を3つ紹介します。

  1. 切りすぎる
    → 木が弱り、風の通り道がなくなる。
  2. 形を整えすぎる
    → 丸く揃えすぎると、人工的で森らしさが消える。
  3. 時期を誤る
    → 芽吹き時や真夏に切ると、木がダメージを受けやすい。

実際に、日本造園学会の研究でも「雑木林の樹木管理は透かし剪定による通風・採光が重要」とされています。
つまり、「切るより透かす」が正解なんです。


プロが大切にしている剪定のコツ

① 残す枝を決めてから切る

多くの人は「どの枝を切ろうか」と考えながら剪定を始めます。
でも、雑木の庭ではそれが逆効果になることが多いんです。

プロは必ず**「残す枝」を先に見極める**ことからスタートします。
例えば、幹の流れに沿って自然に伸びている枝や、将来の庭の骨格になる枝を残す。
そうすると「切らないといけない枝」が自然と浮かび上がってきます。

👉 ポイントは「残したい未来の姿」をイメージしながら選ぶこと。


② 光と風の道をつくる

雑木の庭が気持ちいいのは、森のように風と光が通り抜ける空間があるからです。

プロは剪定をするときに「この枝を残すと夏の日差しを遮ってくれる」「この枝を透かすと冬の光が室内まで届く」といった季節ごとの暮らし方を想像します。

実際、枝を数本透かすだけで風通しが良くなり、病害虫のリスクがぐっと下がります。
夏は涼しく、冬は明るく──剪定ひとつで庭の居心地は大きく変わるんです。


③ 木ごとの個性を理解する

雑木の庭にはさまざまな木が混ざります。だからこそ樹木ごとの性格を知ることが大切です。

  • モミジ … 繊細で水切れに弱く、直射日光にも敏感。強く切ると樹形が乱れやすい。
  • コナラ … 枝ぶりが力強く、多少切っても自然に回復しやすい。
  • アオダモ … 枝先が細かく繊細。柔らかい枝ぶりを活かすと庭が軽やかに。

プロは「どの木が主役か」「どの木を引き立て役にするか」を考え、木の個性を尊重して剪定します。
それによって庭全体の調和が生まれるんです。


④ 森をイメージして高低差を残す

森の風景を思い浮かべると、背の高い木の下に中くらいの木、その足元に低木や草花がありますよね。
この高低差のリズムこそが雑木の庭の自然らしさをつくります。

剪定のとき、ただ高さを揃えてしまうと“均一で単調な庭”になってしまいます。
プロはあえて高木の枝を残して空に抜け感をつくり、中木や低木はその隙間を埋めるように調整します。
すると庭に「奥行き」と「立体感」が生まれ、限られたスペースでも森を感じられるんです。

👉 ポイントは「庭を一枚の絵として見ること」。
前景・中景・背景を意識するだけで、庭全体が引き締まります。


成功談|残したことで生まれた価値

あるお宅では、あえて大きな枝をそのまま残しました。
夏は涼しい木陰をつくり、秋は窓から紅葉が見える。
お客様は「毎日が森の中みたい」と喜んでくれました。

このとき僕は確信しました。
雑木の庭の魅力は、“切ること”ではなく“残すこと”にあるのだと。


まとめ|森のリズムを庭に

まとめ|森のリズムを暮らしに

雑木の庭は、ただ木を植えるだけではありません。
森の空気をそのまま庭に迎え入れ、日々の暮らしに四季のリズムを運んでくれる存在です。

だからこそ、剪定で大切なのは形を揃えることではなく、自然の流れを残すこと
光や風が枝の間を通り抜けるだけで、庭は息づき、暮らしにやさしい影や彩りを添えてくれます。

庭は“整える場所”ではなく、“共に育っていく場所”。
その庭を見ながら季節を感じ、家族と笑い合う時間こそが、雑木の庭がもたらしてくれる本当の価値なのかもしれません。

あなたなら、どんな森のリズムを庭に残したいですか?

  • 切りすぎない
  • 形を整えすぎない
  • 光と風の通り道を残す

この3つを意識するだけで、庭は何倍も美しく、心地よい空間になります。

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