庭木の剪定は「ただ枝を切る仕事」と思われがちです。
でも実際に職人として現場に立ってみると、それが大きな誤解だと分かります。
鋏を入れる前に考えることは山ほどあります。
この枝は来年のために残すべきか? それとも木全体の流れを乱すから切るべきか?
その判断の積み重ねが「木の未来」を決めていきます。
先日、日曜日に知り合いの植木屋さんのところへ修行に行きました。
現場で学んだ「残す理由を持つ剪定」の大切さを、翌日の仕事で実際に試してみました。
今回はその様子と、職人として感じたことをじっくりお伝えします。
なぜその枝を残すのか――来年の芽吹きのためか、木の骨格を整えるためか。そこには職人の判断が必ずあります。
この記事を読めば、
- 職人が剪定のときに何を考えているのか
- 残す枝・切る枝の違いと、その理由
- 独立を目指す職人の学びと実践の記録
がわかります。
日曜日に知り合いの親方のもとで学んだことを、翌日の現場で活かしたビフォーアフターと共にご紹介します。
現場に立ったときに見えるもの
剪定するの前に立つと、一般の人が見る景色と、職人が見る景色は違います。
お客さんからすれば「ちょっと茂ってきたな、スッキリしてほしいな」くらいかもしれません。
でも僕ら職人の目には、
- 枝が重なり風が通らないこと
- 日光が下まで届かず下枝が弱っていること
- 将来大きくなるであろう枝の方向性
まで全部が映り込みます。
つまり剪定とは「今きれいにする」だけではなく「5年後、10年後にどう育つか」を考える仕事なんです。
剪定前(Before)

この木も、一見すると青々として元気に見えます。
でも職人の目で見ると「息苦しい」状態でした。
- 枝葉が込み合い、風が抜けず蒸れやすい
- 光が届かず、内側の枝が衰えている
- 幹のラインが隠れてしまい、木の姿がぼやけている
木は生き物です。
光や風が届かない環境では弱ってしまい、病害虫も発生しやすくなる。
「放っておいたら危ない」――それが剪定前の印象でした。
剪定後(After)

学んだことを意識して剪定すると、木の姿がガラッと変わりました。
ただ枝を減らすのではなく「未来を意識して残す」ことを徹底しました。
- 幹を引き立てる骨格の枝を残す
- 来年の芽吹きに必要な位置の枝を残す
- 不要な枝だけを整理し、空気と光の通り道を作る
仕上がって振り返ると、風がスッと通るのが分かる。
枝数は減ったはずなのに、逆に木全体が軽やかに、そして堂々として見える。
これが「理由を持って剪定した」結果です。
道具を握る手に宿る感覚
鋏を入れるとき、職人は「手応え」で判断することがあります。
乾いて弱った枝はスカスカと軽い音がしますし、若く勢いのある枝は弾むような手応え。
この感覚も大事で、切った瞬間に「この木の調子は今どうか」を感じ取れるんです。
音、手応え、匂い――五感で木を読む。
それも職人の仕事のひとつだと思っています。

親方の言葉
修行先の親方が言ってくれた言葉は今でも頭に響いています。
「切るのは誰でもできる。けど、残す理由を持てるかどうかが職人の差や。」
確かにその通り。
ただ葉を減らせば一時的にスッキリはします。
でも、翌年の芽吹きが乱れたり、幹の流れが失われたりすれば意味がありません。
残す理由を持つこと――これがプロと素人を分ける大きな違いです。
独立を目指す今だからこそ
僕は今、独立を目指して準備をしています。
独立したら、すべての判断は自分の責任。
「これでいい」と言ってくれる先輩もいなければ、フォローしてくれる同僚もいません。
だから今のうちに、先輩職人の現場で学び、実際に試して、体で覚えておく必要があります。
失敗も含めて経験にしておくことが、独立後に大きな武器になるはずです。
剪定から学んだ人生観
木を剪定していると、ふと「人生と同じだな」と思うことがあります。
- 無駄を省き、必要なものを残す
- 今だけじゃなく未来を考えて決断する
- 迷ったら“残す理由”を探してみる
独立への道も同じ。
全部を抱え込むのではなく、自分に必要なものだけを残していく。
その積み重ねが、自分らしい姿をつくっていくのだと思います。
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まとめ
- 剪定は「切る作業」ではなく「未来を見据えて残す理由を探す作業」
- 道具の感覚や木の反応を五感で感じるのも職人の仕事
- 独立は、この判断力と経験を積み重ねた先にある
日曜日に学んだことをすぐに現場で活かせたことで、職人としての自信が少し芽生えました。
これも「独立への道のり」の大切な一歩。
今日もまた、新しい引き出しがひとつ増えました。
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