「植物のある暮らし」って聞くと、なんだかオシャレでちょっとハードルが高い。
でも、僕にとっての始まりは、“なんとなく”の一鉢でした。
「なんとなく」で置いた一鉢の植物
僕が初めて植物を育てたのは、社会人になってすぐの頃でした。
まだ毎日の暮らしのペースもつかめず、部屋もなんだか落ち着かない。部屋は殺風景で、オシャレとはほど遠かった頃です。
そんな時、仕事の買い出しで訪れたホームセンターの園芸コーナーで、小さな植物の苗が目に入りました。
オリーブの苗木、小さな鉢植えでしたが、葉っぱの緑がやけにまぶしく見えて。
「なんとなく部屋にひとつくらい植物があってもええか、かっこいいしな。」
そう思って、ほとんど衝動的に手に取ったのを覚えています。

その日から、僕の部屋のベランダには一鉢の植物が仲間入りしました。
(この写真では室内に入れています)
特別な思い入れも、知識もなく始めた植物との暮らし。
でも、今振り返ってみると、あれが僕の「暮らしの転機」だったのかもしれません。
⸻
■ 枯れかけた葉っぱと、気づきの朝
最初のうちは、水をあげるのも楽しかったです。
「今日も元気かな?」と出勤前にのぞいてみたり、
帰宅後にベランダで葉っぱを見ながら缶コーヒーを飲んだり。
でも何週間かして、慣れない仕事にバタバタしていたある日、完全に植物の存在を忘れていたことに気づきました。
見に行ってみると、葉っぱがポロポロと落ちて、色も悪くなっていたんです。
「うわ、ごめん……」
自然と声が出ました。
そのとき、初めてちゃんと「こいつも生きてるんやな」と感じたんです。
水が足りなければ弱るし、陽が当たらなければ育たない。
植物は何も言わないけれど、ちゃんと「生きている」。
当たり前のことですが、自分の手で世話をして、変化を目の当たりにすると、
その当たり前が、急にすごくリアルになりました。
仕事の影響もあり、植物への愛着の心が芽生えてきました。
⸻
■ 暮らしの中に「植物の時間」が生まれた
それからは、水やりのタイミングを意識するようになり、
朝の支度を少しだけ早くするようになりました。
天気や風の強さが気になるようになって、
植物を置く場所や鉢の向きを工夫したりもしました。レイアウトを考える能力は植木屋には必須の感覚なので、この時の経験が生きているのかもしれません。
最初は「とりあえず育てよう」くらいの気持ちだったのに、
いつの間にか植物の方が、僕の暮らしにリズムを与えてくれる存在になっていました。
たとえば、新芽が出た日。
ほんの数ミリの緑が顔を出しただけで、なぜかすごく嬉しくなったことを覚えています。
「お、がんばってるやん」なんて思ったりして、育て方間違ってないんやなと確認していました。
そうやって植物と過ごす中で、気づけば僕自身の気持ちにも少しずつ変化が出てきました。
朝起きるのが楽しみになったり、水やりしたっけな?と考えたり虫はついていないかなと考えるようになりました。
無理に何かを変えようとしなくても、「今あるものを大事にしたい」と思えるようになったんです。
⸻
■ 植物が“暮らしの師匠”になった日
今では、仕事として自然や植物。剪定、植栽に携わるようになりました。
毎日さまざまな庭や植物と向き合う中で、
あの頃ベランダで見ていた一鉢の植物のことを、ふと思い出すことがあります。
植物って、手をかけすぎてもよくないし、放っておいてもだめなんです。
「剪定」も、ただ切るだけじゃありません。
その木の形や、そこに生きる環境を見ながら、「次の1年をどう生きてもらうか」を考える作業です。
光の入り方、風の流れ、根っこの張り方。
どれも、暮らしにも通じるような気がします。
伸びすぎたらちょっと手を入れて整える。
風通しが悪ければ、枝を間引いて空気を動かす。
根詰まりしていたら、場所を変えてあげる。
そんな風に、自分自身にも手入れが必要なんやと教えてくれるのが、植物なのかもしれません。
⸻
■ まずは、一鉢からはじめてみませんか?
「植物を育てるなんて、自分には無理かも」
そう思っていたあの頃の自分に、今の僕はこう言いたいです。
「まずは、一鉢からでええんやで」
知識がなくても、最初は失敗しても、全然かまいません。
むしろ、植物を育てるのに枯れささない人の方が少ないと思います。
1人1回は枯れさしてしまったことがあるでしょう。
植物は、すぐに応えてくれるわけじゃないけれど、ちゃんとこっちを見てくれています。
その時間が、暮らしの中に少しずつ余白を作ってくれます。
無理せず、焦らず、季節を感じながら。春夏秋冬で見頃の植物を揃えるなんてどうでしょうか。毎シーズン楽しみが増えて生活が豊かになっていくのではないでしょうか。
植物が育つスピードで、自分の暮らしも少しずつ整っていけばいい。
そんな気持ちで向き合ってみると、日々がちょっとだけ、やさしくなるかもしれません。
剪定や植物のご相談も、気軽にご連絡くださいね。
⸻
■ これからも日和を届けられるように
僕の暮らしを変えたのは、有名な庭園でも、高価な植木でもありません。
ただのベランダに置いた、一鉢の小さな植物の苗木でした。
あの日、なんとなく手に取ったあの緑が、
今の僕の暮らしの原点になっています。
忙しい日々の中でも、ふと立ち止まる時間。
風の音に耳をすませたり、小さな芽に気づいたり。
そんな日常の中の「植物のある瞬間」が、きっと人生を豊かにしてくれると、僕は信じています。
今日も日和屋は、「暮らしに寄り添う緑」をお届けしていきます。
誰かの日常に、小さな緑のきっかけが届きますように。
日和屋はInstagramを開設しました。よければフォローの方よろしくお願いします。