庭を見回すと、いつの間にか生えている小さな芽。
それは「実生(みしょう)」と呼ばれる、鳥や風が運んできた種から自然に芽吹いた命です。
見た目はかわいらしいけれど、放置すれば根を張り、庭全体のバランスを乱してしまうことも。
「抜くべき?」「切るべき?」「残して育ててもいいの?」——判断に迷う方も多いと思います。
この記事を読めばわかること
- 実生とは何か(鳥や風が運ぶ仕組み)
- 実生を放置すると何が起こるのか(リスク)
- 残す・抜く・切る判断基準
- 実際の作業手順(Before→After写真つき)
- 再発を防ぐ予防法
- 植木屋として学んだ“命の選択”という考え方
庭に勝手に芽吹いた実生をどう扱うか悩んでいる方に、実体験を交えてわかりやすく解説します。
そして最後には、日々の独立日記として僕自身が学んだことも共有します。
1. 今日は「実生(みしょう)」と向き合った日。
庭を見回していると、植えた覚えのない小さな芽が、ある日ふっと顔を出します。
鳥がついばんで落とした種かもしれない。風が運んできた種かもしれない。人の意思を超えた“自然からの贈り物”——それが実生。
ただし、可愛いだけで見逃すと、根が想像以上に伸びて庭の調和を崩すことも。今回はその「残すか、対処するか」の判断と実作業を、写真と一緒に記録します。
写真(Before):芽吹いた実生の全体感

2. 実生とは?—鳥や風が運んだ“偶然の命”
- 定義:人が植えずに、種から自然発芽した苗木のこと。
- 発生メカニズム:
- 鳥や小動物のフンに混ざった種が落下して発芽
- 風に乗った翼果(たとえばカエデ類など)が土に触れて発芽
- 庭でよく出会う種類の例:モミジ類、イチョウ、ヤツデ、サカキ、ツバキ類…(地域差あり)
かわいい来訪者。だけど、“来てほしい場所か?” をいつも自分に問うのがプロの目線。
3. なぜ放置が危険?—“根の力”と“景観支配”のリスク
3-1. 根の力がとにかく強い
- 小さく見えても、地中ではしっかり定着。
- 既存樹の根に絡み、水・養分を奪い合うことも。
写真(根を確かめる)

3-2. 放置すれば“主役を奪う”存在に
実生は小さいうちは目立たなくても、放置すると成長が早く、庭の主役である樹木や草花の存在感を奪ってしまうことがあります。
例えば、モミジやイチョウなどの実生は、数年で背丈を越えるほどに成長します。
その結果、本来見せたい庭木が影になり、せっかくの景色が台無しに。
庭の設計は「主役と脇役」のバランスが大事ですが、実生を放っておくと、計画していない“主役交代” が勝手に起きてしまうのです。
だからこそ、芽吹いた時点で“残すか残さないか”を見極めるのが大切。
3-3. 既存計画との衝突
実生の一番の厄介さは、「庭の計画を狂わせる」ことです。
庭づくりでは、植木や草花の配置に意味があります。
「どの木を主役に据えるか」「どこに抜け感をつくるか」「季節ごとにどう景色が移ろうか」——これらを考え抜いて配置したはずの計画が、突然生えてきた実生によって崩されるのです。
例えば…
- 主木の足元に勝手に芽が出れば、根が競合して主木が弱る。
- 動線のすぐ脇に実生が育てば、枝葉が張り出して通行を邪魔する。
- 景石や灯籠の近くに芽吹けば、せっかくの見せ場が台無しに。
- 塀や基礎の際に実生が成長すれば、根が構造物を押し、将来的に破損を招くことも。
庭は「完成」ではなく、「時間とともに育っていくもの」。
そこに予定外のプレイヤー(実生)が入り込むと、設計のリズムが崩れ、結果的に**“誰も意図しない景色”**が生まれてしまいます。
だからこそ、実生は“芽吹いた時点”で早めに判断するのが大切です。
残すなら計画に組み込み、残さないなら小さいうちに抜く。
この一手が、未来の庭を守ります。
4. 残す?抜く?切る?—プロの判断軸
4-1. 「残していい」ケース
- 欲しい位置(将来の主木・下草の間・余白の端)
- 樹種が庭の設計思想に合う
- スペースが確保でき、根の競合がない
4-2. 「抜く or 切る」べきケース
- 既存樹や建物、配管の至近
- 将来サイズを考えると手に負えなくなる位置
- すでに根が強固で、周囲の根圧やレンガ・縁石を押しはじめている
判断は“その場の可愛さ”ではなく、3〜5年後の姿で考える。
5. 実作業レポート(写真で流れ)—抜けるなら抜く、抜けないなら切る
5-1. Before:まずは全体像を把握
- 実生の数・位置・周辺根を確認。
- 残す候補があれば印をつけ、抜く/切る対象を確定。
写真(Before)

5-2. 抜取りトライ:土を緩めてから
- 表土を軽くほぐし、根元を左右に微振動→上方向へ。
- 雨後や潅水後は抜けやすい(無理せず、根を千切らないのがコツ)。
写真(抜取りトライ)

5-3. それでもビクともしないなら——切る
- 根が太い/絡む場合は、根元でシャープに切断。
- 切り口は地際よりやや低めに抑え、再萌芽の光を遮る配置でマルチング。
写真(切る瞬間)

5-4. After:余白が庭を美しくする
- 既存樹の“顔”が出る。
- 風の通り・光の回りが改善し、足元が軽くなる。
写真(After)

6. 使った道具と、安全のひと工夫
- 薄刃の移植ごて/根切りスコップ:こじって・緩めて・抜くがしやすい
- 小型ノコ・剪定バサミ:地際で確実に
- 厚手手袋・保護メガネ:トゲ・反発枝から手と目を守る
- 膝当て or 園芸マット:足元作業が多いので体の負担軽減
“時短は段取りから”。道具を最初に並べるだけで、作業効率は一段上がる。
7. 再発させないための“予防設計”
7-1. 種の溜まり場を作らない
- 落葉・実の定期清掃(特に角・縁・溝)
- 風の吹き溜まりに低い縁取りやマルチで侵入しにくい面をつくる
7-2. マルチング&地表管理
- バーク堆肥・ウッドチップで光を遮り発芽抑制
- 砂利なら防草シートの目詰まりを定期点検
7-3. タイミング
- 雨後の柔らかい土は抜きやすい
- 生育前の早春/梅雨明け直後も好機(地域で前後)
予防は“毎回の掃除”と“面の管理”から。やりっぱなしを作らないのがコツ。
8. よくある質問(Q&A)
Q1. 除草剤で一気にやってもいい?
A. 範囲・樹種・周辺環境によります。既存樹の根域や水回りが近いときは慎重に。物理的に抜く/切る+マルチングの組み合わせが安全で景観的にも◎。
Q2. 切ったあと、また出てくる?
A. 地下部が生きていれば萌芽の可能性あり。光を遮る配置・再萌芽の早期除去・マルチングでコントロール。
Q3. 残したい実生はどう育てる?
A. 仮植(鉢上げ)で根張りを整え、将来の植栽位置にゆとりができたタイミングで計画的に定植。主役・脇役の役割を最初に決めておく。
9. 今日の学び—“命の偶然”と“人の意思”
実生は自然の偶然。
でも、庭は偶然だけでは守れない。
“残す勇気”と同じくらい、“切る決断”もまた優しさ。
余白があるから、美しさが立ち上がる。
今日も、庭と対話しながらそのことを体で学びました。
今日もいい日。
10. 関連・過去記事(自然に差し込み)
- 「剪定の本当の意味は『枝を切る』ことじゃなかった」(“余白”の考え方につながる)
- 「真夏前にやっとこ!庭をきれいに保つ5つの準備」(足元管理の基本)
- 「独立日記|足元が整えば庭が整う」(Before→Afterの見せ方解説)
11. Instagram & ココナラのご案内
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