植木屋の現場で気づいた「安全第一」の本当の意味
今日は朝から空がどんより。
天気予報では、午後から2mmの雨予報。
薄暗い雲が空を覆い、ぽつぽつと雨が降り出していたのですが、予備日は設けていませんでした。延期しても、代わりに来れる日無いしな。と思いながら
「まぁ、作業はできるやろ」と思って現場に向かいました。
でも、あの日の判断は、後から僕に大きな気づきをくれた。
今回の現場は、高木の剪定がメイン。脚立を使ったり、木によっては木に登る木もありました。
しかも、エンジントリマーを長時間使う作業もあります。
最初から「今日はしんどいな」と覚悟はしていましたが、
それでも「濡れたくないし、早よ終わらせて帰ろ」と、どこか気持ちが急いでいたんです。
でも――
結果的に、今日の現場ではひとつ、大きな学びがありました。
それは、「安全第一」ってただのスローガンやお飾りやない、ということ。
命に関わる大事な考え方なんやということでした。
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雨の日の高木作業、それだけでリスクは倍増
まず、今日の条件を整理してみます。
- 雨で滑りやすい状態
- 高い木に登る必要がある
- 長時間のエンジントリマー作業
- そして、雷の音が遠くで鳴り始める

…これだけ揃ったら、ほんまに“危ない日”です。
木に登るということ自体が危険を伴う作業なのに、
濡れた枝は滑りやすく、足場の安定も悪くなります。
顔や体につたう雨水がなお集中力を欠いてきます。
しかも、エンジントリマーは重たく、腕や肩への負担も大きい。
集中力を切らすと一発で事故につながるような、そんな危険な道具です。
そして何よりも…
「雷」が鳴り始めた時点で、正直ゾッとしました。
2mmはそんなに豪雨というレベルじゃないはずなのに。
気をつけてどうこうできるレベルでは無さすぎて、怖かったです。
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勢いよりも、生きて帰る判断を
雷が鳴ったのは、作業を始めて一時間ほど経った頃。
3本目の高木の剪定が終わったころでした。
「キリがいいとこまであと2本…もうちょいやな」
「あそこまでは終わらせたいな」
「作業始めたばっかやし、休憩にはまだ早い。やってまえ!」
そんな気持ちが頭をよぎりました。
でも、ふと手を止めて、後輩の顔を見たとき、思ったんです。
「無理してでも終わらせる」よりも
「元気で明日も現場に立てる」方が、何倍も大事やんかと。
「家に帰って大事な人にただいま」と言う方が何十倍も大事だと。
命がけで登って、雷が近づいてきて、
もしも事故が起きたら――その“もうちょい”を悔やむ暇もなくなります。
「雨と雷が落ち着くまで待機しよう。」
そう決めて、道具を一旦片づけました。
正直、まだ始まったばっかりだったし、やれる気持ちしかなかった。
今日の作業目標までいけるのか不安でした。
でも、そういうときこそ「引く判断」ができるかどうかが大事なんやなと
痛感した一日でした。
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焦る気持ちに負けそうな日もある

現場仕事をしていると、誰しも「早く終わらせたい」って思う日があります。
特に夏の雨の日なんかは、湿気と重さで全身ベタベタやし、
カッパを着ても汗か濡れているのかわからなくなるしで最悪です。
道具も滑るし、トリマーの音で頭はガンガンしてくるし、
気持ちも荒れてくる。
「あとちょっとやし」
「今日中に終わらせた方が楽やし」
「いけるやろー」
――そう思って突っ込んでしまうことも、あります。
でも、それで怪我をしたり、事故になってしまったら、
その「あとちょっと」に、どれほどの代償を払うことになるのか。
そのことを、今日はリアルに実感しました。
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“命を守る技術”は最高にかっこいい

正直に言うと、ぼくは前まで「安全第一」って
ちょっとお堅くて、堂々と言うのは小っ恥ずかしいと思ってました。
「そんなもん言われんでもわかってる」
「そんなん守ってたら作業が進まんよ」
…そんなふうに考えていた時期もありました。
でも、現場で数年やってみて、最近気づいたんです。
“本当にカッコいい職人”って、安全にこだわる人たちやと。
自分だけやなく、チームみんなを守れる人。
その場の空気を読んで、「今日は無理せんとこ」と判断できる人。
作業を早く終わらせる技術も確かにすごい。
でも、命をちゃんと持ち帰る技術は、もっとすごい。
そういう人たちって養生もしっかりするんです。ここ汚したら後々掃除が大変やからと。
周りが見えていて、勢いで行かない。冷静な判断を下せるのが”本当にかっこいい職人”やとおもいます。
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もしも、今日のことを弟子が見てたら
まだ今は、会社に雇われて働いてるけど、
いつか「日和舎」として弟子を育てる日が来たとき、
今日みたいな判断ができる親方でありたいと思います。
「なんで今日は途中でやめたんですか?」って聞かれたら、
「無事に帰るのがいちばん大事やからやで」って言えるように。
その背中を見て、「ああ、これが“仕事”なんやな」って
感じてもらえるように。
それが、ぼくが目指す「日和舎」という場であり、
働くということの本質なんやと思っています。
そっちの方がかっこよくないですか?
言葉の裏には「焦らんでも終わるから任せとけ!」という意味も含んでいるように感じます。
→独立は”目的じゃなくて手段”についての記事も見てください
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まとめ:命を守ることは、技術のひとつ
「早く終わらせたい」って思う気持ちは悪いことやない。
でも、「無事に帰る方がもっと大事」って気づくこと。
それをちゃんと現場で実践できる人間になっていきたい。
今日のような過酷な条件の中で、
無理せず、引く勇気を持てたことは、
ある意味ひとつの“成長”だったかもしれません。
みなさんの毎日にも、きっと「あとちょっと頑張れば…」って思う瞬間があると思います。
でも、そんなときこそ一歩立ち止まって、自分の命や心を大切にしてあげてください。
今日も、生きて帰ってこれてよかった。
そんな当たり前が、ほんまは一番ありがたいことやと実感しています。
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日和舎では、「暮らしの中の小さな気づき」や「働くって何やろ?」をテーマに、日々感じたことを言葉にしています。
雨の日でも、重たい現場でも、大切なことは変わりません。
明日もまた、元気に働けるように――それが、ぼくが「日和舎」に込めた想いでもあります。
晴れでも。雨でも。
働く人にとって“いい一日”になりますように。